北陸というと日本海側の雪深い土地柄なので
東海道とは違った風情を楽しむことができました。

まず、北国街道という名前ですが
資料や地域によって呼び方が様々なので
どの名前で統一して歩いていこうか悩みました。
現在、北国街道として一番脚光をあびているのは
中山道追分から長野市を経て新潟県高田までの区間でしょう。
海野宿、上田、善光寺、妙高高原と見どころが豊富ですし
道中にはあちこちで北国街道の表記を見かけます。
一方、富山県、石川県、福井県に関しては
北陸街道という呼び方が多かったように思います。
滋賀県では再び北国街道の表記を多く見かけました。

ルートについても全体的に複雑でした。
黒部川付近や松代では別ルートが存在したり、
滋賀県では琵琶湖の東西にルートがあったりと、
どこを通ると一般的な使われた道筋なのか悩みました。
結局そういう場所は別ルートも歩くことにしたのですが
想定以上の時間がかかってしまったのは誤算でした。
北国街道のルートの定義は難しいですが
加賀藩の参勤交代で使われたルートを基本にしつつ
一般的に認識されている滋賀県の鳥居本宿から
長野県の追分宿まで歩くことにしました。

次に計画上で大変だったことは気候です。
北陸地方は11月に入ると春まで曇りがちな気候が続きます。
また冬は雪が多いので長距離を歩くには厳しくなります。
これをいかに避けて計画するかがポイントでした。
それでも3月下旬に妙高高原付近を通過した折は
豪雪地帯ということで残雪がまだまだ残っていて
スノーシューを持参して歩かざるえませんでした。
スノーシューは軽くて動きやすいと言われてますが、
街道歩きでは国道など雪のない場所が結構あることから
その都度の脱着はなかなか面倒なものでした。

それに加えて雪道においての移動時間の増加(平地の1.5倍)。
さらに軽いはずのスノーシューを背負うとき場合は
長距離を歩けば歩くほどズシリと重くのしかかってきます。
豪雪地帯は雪の時期こそ良いものが見れることがありますが
ことのほか街道歩きに関しては相当体力が必要だと感じました。

北国街道の随一の難所といえば親不知が有名です。
江戸時代は波打ち際を歩いていたわけですが
現代は大型車が頻繁に通る国道8号線を歩かねばなりません。
車で何度か通過したことがあったので
道の状況から相当苦労するなと考えていたことから
大型車が少ない連休の合間を第一条件として
気候が安定する夏場で計画を立てています。

ところが当日の天候は大雨。
朝が早かったので交通量は少なかったものの
傘を差して歩くものなら車と接触しそうなほど勢い。
車としてもまさか人が歩いてるとは思わない場所なので
結局は合羽を着て親不知を乗り切りました。
ラッキーだったのは洞門内を歩くことが多かったので
それほど雨にはかかることがなかったという点。
風があれば別ですが車の恐怖を除くと快適なものでした。
とはいえ、北国街道随一の難所といわれるだけあって
現代でも難所であることを思い知らされました。

次に印象的だった場所をいくつか。
以下に箇条書きで書いていますが
それぞれの詳細は当ブログの該当区間の記事で
詳しく書いてありますので参照していただければと思います。

・木ノ本宿→今庄宿での峠越え
約40キロ以上の行程で峠があることから
どのように計画していくかで悩んだ区間でした。
板取宿と今庄宿の雪対策された古い家々は感動しました。

・越前藩の加賀藩対策の気合いの入れよう。
外様の加賀藩と譜代の越前藩。
有事の際の福井城北方における堅い守りはかなりのもので
今では想像できない重要な拠点だったことに驚かされました。

・野々市宿付近の町並みと金沢
古い家々が残る宿場町風情がある野々市。
一方で城下町で強固な町づくりがされた金沢。
ほんの隣町なのに対照的な町作りに面白さがありました。

・富山市内の神通川の付け替えと立山連峰。
3000m級の山々を間近に見ながら歩く幸せ。
川とともに歩んだ城下町の繁栄の光景を楽しめました。
この区間においては天候が良くてほんと良かったです。

・黒部川の季節によってのルート変更。
富山平野には幾重もの川が流れますが
特に黒部川は氾濫が多くて別ルートが存在したりと
当時の人々の苦労がわかる区間でした。

・筒石、名立付近の旧道の藪漕ぎ。
山体崩落によって道筋が変わった場所では
災害から再び蘇った集落がありました。
筒石の独特な町並みにも感激。

・高田から妙高高原に続くだらだら続く坂道。
ダイナミックな田切地形と妙高山の眺めは良いものの
城下町から延々と続く上り坂には相当疲れました。

・善光寺寺内町。
寺の多い長野市内。歴史の深い町。
善光寺はこれまで何度か来ているのですが
歩いて到達できたことに喜びを感じました。

・上田と千曲川の流れ。そして最大の難所と海野宿。
千曲川の河岸段丘上を通る街道。
田切地形のダイナミックさに感動したのですが
そういう地形からくる絶壁の難所が存在していました。

海野宿の町並みは重伝建に指定されています。
江戸時代の古き良き風情がありました。
こういう場所は夕方の人が少ない時間がいいですね。

さいごに。
北国街道歩きの良いところは
太平洋側にない良さがあるという点でしょう。
全体的に良い意味での田舎なのでゆったり歩くことができました。
北国街道を踏破するには長い期間がかかったわけですが
ルートの調べ方は前半と後半では力の入れようが違ってきてました。
当初は参考書オンリーで計画を立てていたのが
次第に古地図や航空写真も織り交ぜていっています。
これは北国街道は資料となる本や歩いてる人が少ないことから
自分自身で調べていく必要があったということに他なりません。
おかげで旧道の調べ方のスキルアップも楽むことができました。
次は関連する街道である新潟方面を歩いてみたいところです。
以上。enjoy!北国街道!