今週末に完歩予定の日光脇往還(千人同心街道)の道筋を埼玉県の歴史の道調査報告書で事前に調べたのと比較してるけど、調査報告書も全面的に信頼できないような・・・まっ、江戸の道を示してるのか明治の道を示してるのかって話もあるけど・・・直線の簡単な道筋を示してる気がして怪しいなぁ(笑
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GM (@NGP_GM) 2018年3月7日
ここでいう「歴史の道調査報告書」という本は
学術的な資料としてトップクラスの信憑性があるもので
街道ウォーカーの中では敬意をこめて教科書と呼ぶ人がいるほどです。
ただ、その信憑性は街道によって違っています。
実作業は各県の教育委員会が行っていることから、
県によって熱意の差や精度の差が否めません。
ルートマップが付属しているものもありますが
地図が小さく見づらかったり、大雑把だったりして
古地図と見比べてみると「あれ?」と思うことがあります。

とはいえ、専門家が調べあげた資料なので
一級の価値であることは否定できません。
特に誰も歩かないようなマイナー街道においては
他に資料がない場合が多いので唯一無二の存在です。
信憑性の価値としては別格の「S」。
ただし、入手には大変な苦労を伴います。
大抵は大きな図書館や資料館などにあるのですが
資料によっては現地にしか在庫がない場合が多く
入手の困難さも「S」なのは残念なところです。
資料性の価値がある「町史」などの類も同様ですね。

次に自治体が発行している街道マップ。
これも精度の差が自治体によって随分違います。
宇都宮国道事務所「日光街道御徒マップ」
http://www.ktr.mlit.go.jp/utunomiya/utunomiya_nikkomap001.html
和歌山県観光連盟「街道マップ|高野巡り・熊野古道」
https://www.wakayama-kanko.or.jp/walk/index.html
基本的に自治体制作のマップは観光案内が豊富です。
旧道に拘らない街道ウォーカーなら満足のいく内容と思います。
上に例をあげた2つのマップですが
どちらも消滅した区間まで書かれてある力作です。
パッと見た感じ信憑性は似たような感じに見えます。
ところが大きな違いがあります。
自治体のマップは万人の目に触れやすい資料なので
数多くの人が手に取って歩くことが想定されています。
たとえば廃道になっていて歩けないような場所は
別のルートが迂回路として街道の指定となっていたりと
安全を優先してルート選定されていることが多いのです。
ルートを見て明らかにおかしな場所はないか?
あまりにも不自然な道筋が多かったりするならば
別途、古地図などを用いて検討が必要かもしれません。
熊野古道マップはトンネルを街道として指定していたりと
明らかに迂回路重視であることがわかります。
一方、日光街道マップでは廃道の箇所は点線表示で残して
あえて迂回路を書いていない点が凄く好感が持てます。
このことから熊野古道マップは別途検討が必要なので「C」。
日光街道マップは「A」という評価になると思います。

次に古地図について。
近頃はスタ大が提供するマップや今昔マップが
一番手っ取り早く見れるので大変ありがたいのですが
明治中頃〜昭和初期の地図であることを忘れてはいけません。
明治時代だけでも45年もの長き時間が流れてます。
道筋が大なり小なり変化していると考えるほうが自然で
どの道が江戸時代の道かという見極めが必要です。
江戸時代に描かれた地図、例えば国絵図などは
宿場の位置や川と街道との関係など大まかにはわかりますが
測量技術が現代のように正確でないのが難点です。
その点、測量技術が発達する明治初期の地図のほうが
わかりやすく見やすいので信憑性が高い場合があります。
とはいえ、大まかでも知れることは価値があることです。
天保図や元禄図など時代ごとに製作されているので
各年代のものを見比べて検討してみると信憑性があがります。
併せて測量に定評がある伊能図も確認してみると効果的でしょう。
有名な五街道分間延絵図は
五街道とそれに準じた街道のものに限られますが
当時の様子が手に取るようにわかるという代物です。
デフォルメして描かれてる点を除けば一級品ですね。
ということで以下のように評価してみました。
・迅速地図「A」
明治初期の段階で軍部が作成した地図。
関東地方のものはネットでアクセスすることができます。
・地理院地図明治初期(旧版地図)「A」
お取り寄せする価値があると思います。
取り寄せ方法はこちらのブログが詳しいです。
・今昔マップ、スタ大地図「B」
年代が新しいことで評価が下がってしまいます。
・江戸期の国絵図、伊能図「B」
・五街道分間延絵図「A」
江戸時代の資料は多少精度に難があっても貴重です。

次に個人のサイトや街道本について。
街道を扱っているものが数多くありますが
それぞれ作者の趣旨が違っていたりするので
どれが信憑性があるかというと一概には言えません。
熱心に調べあげたルートマップが載せてあっても
それらはどんな資料を用いて作られたものかを考えると
鵜呑みにしてしまうのは少々危険な気がします。
それでも先人が歩いた記録はとても参考になります。
先ほどあげた古地図や他の資料なども併せて検討してみると
より昔に忠実なルートが見えてくるのではと思います。
また当サイトに関して言えることですが
街道歩きの初期の記事と最近の記事では信憑性が全然違います。
街道ウォーカーは歩くことによって
街道スキルがどんどんあがっていくものです。
初期の記事は単なる旅行記といった感じでしたが
最近では結構な資料を紐解いて検証を重ねて書いています。
そういう意味で最近の記事の信憑性を「A」とするならば
昔の記事は「C」という評価になってしまいます。
さいごに。
「一体、どの資料を信用すればいいのだ!」
これは街道を調べる人にとって永遠の悩みでしょう。
タイムスリップが出来れば答えがでますが無理な話で
先人が作った資料を元に想像するほかありません。
何の資料が信憑性があるかないかは
最終的には各個人の判断になっていきますが
自ら調べて街道を歩く楽しさ=「街道力」を付けていくと
今より一層ますます街道歩きが楽しめるかもしれません。
以上
enjoy!街道歩き