2019年01月09日

西宮道その1・門戸厄神→仁川

西宮道は西国街道の分岐点から武庫川沿いを北上して
宝塚付近で大坂からの有馬道と合流する道筋です。

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↑詳しいルートと記録は【山行記録のページへ】もご覧ください。

名称は西宮道(明治からは西宮街道)としていますが
これは宝塚付近での呼び方になっています。

昔の道の名前は行き先の地名を付けるのが一般的でしたが
西宮付近では有馬道と呼ばれていました。

ようするに数ある有馬温泉への道筋というわけですね。

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西国街道との追分には指差し道標がありました。

「日本、三躰、厄神明王社」

文久年間のものなので
明治以降に流行した指差し道標とは貴重さが違います。

ここでの厄神とは門戸厄神のことで
関西で有名な厄除けさんへの道筋を示しています。

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かつては田園風景が広がっていた場所は
閑静な住宅地になって昔の面影は少な目です。
街道の左手は六甲山系の山裾になっていたのですが
これも削られ住宅地に生まれ変わっています。

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「右 尼大坂高木道」、
「荒神道」、「左 厄神明王道」

西国街道へ短絡する道への道標ですが
ここでの荒神とは宝塚付近の清荒神になります。

この場所で清荒神を表す文字があるということは
西宮道は有馬への湯治目的以外にも中山寺や清荒神、門戸厄神など
参拝目的で大いに利用されていたことがわかります。

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腹切地蔵。
なぜかお腹のどころで折れてしまっていることから
腹に関する病気が必ず治るという言い伝えがあり信仰されています。

この腹切地蔵のある場所は甲山参詣道との交点にもなっています。
甲山は独特な形状をした山で南麓に神呪寺があるのですが
甲山大師の名で親しまれて今も大変な賑わいがあります。

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新幹線との交差の手前にあった自然石の道標。

「是よりにし 加ふと山 くわんおんみち」

その先には江戸時代初期の庚申塔もありました。
庚申さんは厄難や疫病を外から入ってこないようにするため
村はずれに置かれることが一般的でした。
場所的には神呪集落のものですね。

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甲東園を過ぎて阪急今津線の踏切を渡ります。

この甲東園という名前ですが甲子園や苦楽園などと同じ
西宮七園と呼ばれる高級邸宅街の一つとされています。

甲山の東の地区なので「甲東」なのですが
元は甲東園という果樹園が名前の始まりなのだそうです。

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踏切の先には西国街道大市集落付近からの脇道(青)との追分があります。
この脇道は西宮道の一つという説もあるのですが
古い絵図を見ても特に大きく描かれているわけでもないので
単なる短絡路的なものだったのでは思われます。

この場所には道標(下)があるのですが

「右 厄神明王道」「荒神道」「高木今津道」

と、あります。脇道は高木今津道ですね。

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仁川の手前にあった墓地は貝之介墓地です。

区画が整然となっておらず如何にも古い印象です。
昔は葬儀で死者を運ぶ際に使う籠の置き場が各村ごとに作られ
墓も各村ごとにまとめて作られていたといいます。

昔は阪急の線路の西側にも広がっていたそうです。

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仁川は天井川になっていて川付近は勾配になっています。

武庫川の渡河までの間で逆瀬川などの川を渡りますが
六甲山から流れ出す土砂で天井川の形式が多く
災害の対策などの苦労がしのばれます。

この日の仁川は水が流れていませんでした。
元々の仁川は六甲山を源とする水量豊富な川だったのですが
江戸時代始めに西宮の百姓が水利権を無法に横取りして
上流で夙川方面に7割の水を獲ってしまったそうです。

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そのため肝心の仁川はいつも干からびることになるのですが
昔の文献に西宮道は砂地が多く歩くのが大変とあることからも
干からびた川の渡河が何か所もあったことがわかります。

以上、その1として仁川までの道筋をたどってみました。
トータルで13kmほどの距離ではあるのですが
歴史のある道は本当に中身が濃いですね。

地元ということもあって
調べれば調べるほど面白く楽しいものです。
その2の宝塚までの道筋もご期待ください。



   
posted by にゃおすけ at 15:19 | Comment(0) | 有馬温泉への街道 | 更新情報をチェックする
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