2020年07月09日

修羅場の白骨線 〜松電バイト記憶からその3〜

「三日入ると三年は風邪をひかない」
こういう謳い文句がある乳白色の湯で有名な白骨温泉。
不便な場所にありながらも人気の温泉地です。

お泊りのお客向けに上高地と結ぶ路線があったのですが
朝の1便目はチェックアウトに便利な時間だったので
大抵は満席で時には補助席まで埋まることがありました。



車掌の仕事の一つに切符の発行がありますが、
白骨温泉には券売機がないので当然皆さん切符がない状態で、
いかにミスなく発行できるか力量が試される時でした。

車内で発行する切符は車内補充券と言いまして、
2枚1セットになった両方に穴を開けて1枚(青券)はお客に渡して
もう1枚(白券)は営業所にて運賃と共に収める仕組みでしたが
この白券を紛失してしまった時はえらいことでした。

ようするに、白券は切符を発行した証拠になるもので、
当然、お客から運賃をもらっていることになります。
白券を紛失したと嘘を言えば…ネコババが出来るわけです。

まー、そういう輩はいなかったと思いますが、

「やっべー、白券なくしちゃったよ!」

と、こういう声が清算時によく聞かれました。

このように、乗車券の発行作業は気を遣う作業で、
上高地までの短時間に車内放送も含めてやるわけですが、
ここで重要になってくるのが釜トンネルの信号です。

運悪く、青信号で通過したものなら・・・

まさに修羅場!

こうならないためにも、ベテラン車掌の中には、
あらかじめ、白骨温泉でどれだけ乗ってくるかを予想して、
前もって車内補充券を作っておく戦法をとっていました。
でも、この戦法をもってしても間に合わない場合は・・・

降りる時に料金箱に運賃を投入してもらう!!

バスの料金箱は金庫ですから最強の手段といえます。
これはバスの一般的な支払方法と同じですね。

【追記1】
記事の初出から訂正した部分があります。
何分、記憶が曖昧な部分がありご容赦下さい。

【追記2】
中の湯ピストンという路線がありましたが、
白骨以上に過酷でテクニックを要求されました。
さらに距離も短かったのでヤバかったです。



白骨線の名物といえばこのヘアピン。
ストリートビューを見ると随分と広くなりました。

上高地輸送は繁忙期には運転手が各地から応援にきます。
当時のヘアピンは幅が狭くガードレールすらなかったので、
皆さん安全策を取って2回ぐらい切り返すのですが、
地元の営業所の運転手は切り返さずに行くんですよね。

さすがは地元!とハンドル捌きに惚れ惚れしたものです。

もちろん、どちらも危険はありませんが、
車掌は一番前に立っているので怖かったですね。

前輪はバスの構造上、一番前の客席の下にあります。
曲がる時は前輪を意識して曲がれば良いものなので
急カーブでは前輪より前の車体が外にはみ出てしまいます。

前面の窓の下を覗けば、恐ろしい崖。そして渓谷・・・
宙に浮いてる感覚は今も忘れられません。



車掌の仕事は普段は17時には上がれました。

その後は飯に風呂といった具合ですが、
全国から集まった仲間だけに旅好きが多く、
夜は近場の温泉へとよく出かけていました。

行き先は大体は乗鞍高原でした。
白骨温泉と同様の乳白色の温泉です。
そして硫黄の匂いもすごい。

入ってる時は極上の幸せがあるものの
当然のことながら翌日も匂いが残ります。

すると、どうでしょう。
翌日の乗務に影響が出るのです。
一番前で立っているとコソコソ話が聞こえます。

「なんだか卵の腐った匂いがしない?」

す、す、すいませーん。

ちなみに冒頭に書いた白骨線のお客さんの中にも
同じような匂いがあったのは言うまでもありません。


posted by にゃおすけ at 14:05 | Comment(0) | 懐かしい記憶 | 更新情報をチェックする
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