こういう謳い文句がある乳白色の湯で有名な白骨温泉。
不便な場所にありながらも人気の温泉地です。
お泊りのお客向けに上高地と結ぶ路線があったのですが
朝の1便目はチェックアウトに便利な時間だったので
大抵は満席で時には補助席まで埋まることがありました。
車掌の仕事の一つに切符の発行がありますが、
白骨温泉には券売機がないので当然皆さん切符がない状態で、
いかにミスなく発行できるか力量が試される時でした。
車内で発行する切符は車内補充券と言いまして、
2枚1セットになった両方に穴を開けて1枚(青券)はお客に渡して
もう1枚(白券)は営業所にて運賃と共に収める仕組みでしたが
この白券を紛失してしまった時はえらいことでした。
ようするに、白券は切符を発行した証拠になるもので、
当然、お客から運賃をもらっていることになります。
白券を紛失したと嘘を言えば…ネコババが出来るわけです。
まー、そういう輩はいなかったと思いますが、
「やっべー、白券なくしちゃったよ!」
と、こういう声が清算時によく聞かれました。
このように、乗車券の発行作業は気を遣う作業で、
上高地までの短時間に車内放送も含めてやるわけですが、
ここで重要になってくるのが釜トンネルの信号です。
運悪く、青信号で通過したものなら・・・
まさに修羅場!
こうならないためにも、ベテラン車掌の中には、
あらかじめ、白骨温泉でどれだけ乗ってくるかを予想して、
前もって車内補充券を作っておく戦法をとっていました。
でも、この戦法をもってしても間に合わない場合は・・・
降りる時に料金箱に運賃を投入してもらう!!
バスの料金箱は金庫ですから最強の手段といえます。
これはバスの一般的な支払方法と同じですね。
【追記1】
記事の初出から訂正した部分があります。
何分、記憶が曖昧な部分がありご容赦下さい。
【追記2】
中の湯ピストンという路線がありましたが、
白骨以上に過酷でテクニックを要求されました。
さらに距離も短かったのでヤバかったです。
白骨線の名物といえばこのヘアピン。
ストリートビューを見ると随分と広くなりました。
上高地輸送は繁忙期には運転手が各地から応援にきます。
当時のヘアピンは幅が狭くガードレールすらなかったので、
皆さん安全策を取って2回ぐらい切り返すのですが、
地元の営業所の運転手は切り返さずに行くんですよね。
さすがは地元!とハンドル捌きに惚れ惚れしたものです。
もちろん、どちらも危険はありませんが、
車掌は一番前に立っているので怖かったですね。
前輪はバスの構造上、一番前の客席の下にあります。
曲がる時は前輪を意識して曲がれば良いものなので
急カーブでは前輪より前の車体が外にはみ出てしまいます。
前面の窓の下を覗けば、恐ろしい崖。そして渓谷・・・
宙に浮いてる感覚は今も忘れられません。
車掌の仕事は普段は17時には上がれました。
その後は飯に風呂といった具合ですが、
全国から集まった仲間だけに旅好きが多く、
夜は近場の温泉へとよく出かけていました。
行き先は大体は乗鞍高原でした。
白骨温泉と同様の乳白色の温泉です。
そして硫黄の匂いもすごい。
入ってる時は極上の幸せがあるものの
当然のことながら翌日も匂いが残ります。
すると、どうでしょう。
翌日の乗務に影響が出るのです。
一番前で立っているとコソコソ話が聞こえます。
「なんだか卵の腐った匂いがしない?」
す、す、すいませーん。
ちなみに冒頭に書いた白骨線のお客さんの中にも
同じような匂いがあったのは言うまでもありません。
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補充券の話で
島々宿から新島々まで30人くらい乗ってきたことがありましてね
面倒だから切符切らないで
これを「現収」と言いましたが
新島々着いて集札手伝ってくれた
橋本ダルさんに
バカ!何やってんだ、
横領してるって言ってるようなもんだろ!
すぐ切符切れ!と怒られたことを思い出しました。
バスはこれより中部山岳国立公園線
釜トンネルへ入りますが
トンネルが狭く信号機による交互通行になっており
赤が13分10秒、青が2分30秒です。
トンネル内の1番勾配のきついところは
20%となっており
バスの1番前と後ろで高さが2メートルほど違います。
トンネルでは水滴が落ちてきますので
恐れ入りますが窓をお閉めください。
信号待ちの時間を使いましてお帰りのバスのご利用についてご案内します。
山岳路線のため立ってのご乗車ができません。
始発の上高地バスターミナルを満席で発車しますと
途中停留所からはご乗車になれません。
平湯方面、白骨温泉、休暇村方面も同様です。
また上高地バスターミナルからのご利用には
乗車券の他、便を指定した整理券が必ず必要です。
大正池を散策される方は先に大正池で降りまして
お帰りは上高地バスターミナル始発からの乗車を強くお勧めします。所要1時間ほどの
ほとんど平坦な歩きやすい遊歩道をご利用ください。
まもなく大正池につきます。
忘れ物ないようご注意ください。
乗車券は前は運転手、後ろは車掌が回収します
(勝手に運転手の仕事増やす)
前後お近くから足元に気をつけてお降りください。
松本電鉄バスをご利用くださいましてありがとうございます。
(無線、カトーくん悪いけど上高地着いたらバス乗り換えて
◯◯さんと白休飛んでくれる?)
再度コメントありがとうございます。
とてもとても嬉しいです。
宿から30人の乗車があったとは凄いですね。
自分ならパニくってしまいそうです 。
橋本ダルさん懐かしすぎます!
お顔と共に「バカ!」の声色が想像できます。
後半の車掌アナウンス。
車掌によってアレンジがいろいろありましたが、
カトーさんのはとてもわかりやすい。
乗客目線な感じが伝わってきます。
対して、自分のアナウンスはどうだったか。
とても機械的だったと思います。
仮に今、車掌で車内放送ができるとするなら、
観光案内や豆知識もふんだんに盛り込んで
目一杯サービス満点にやっちゃいますけどね。
まぁ、度が過ぎると五月蠅がられそうですが(笑